ほやほや福井


特集vol.1 越前がに

味覚の王者「越前がに」を食べずして、福井の冬は語れない!

「越前がに」ってこんな”かに”。

福井の冬の味覚の王者、「越前がに」。全国各地にあるカニの中でもとりわけ美味しいと評判で、皇室に献上している唯一のカニ。「越前がに」とは、福井県で水揚げされた雄のズワイガニのことを言い、雌はセイコガニと呼ばれています(2つの詳細は後述)。目印はなんといっても黄色いタグで、全国に先駆けて福井県が導入した”食のブランドの証”です。そんな美味なる「越前がに」について、もう少し詳しくお話しましょう。 「越前がに」の美味しい季節はご存知の通り、冬。その冬の時期に合わせてカニ漁も解禁になります。解禁日は毎年11月6日の午前0時。解禁日を海上で迎え、すぐに漁ができるようにと、前日の夜に多くの漁船が出港します。この日を特別な日と感 じている漁師も多く、漁港はいつにも増して賑やかです。ちなみに「越前がに」漁に出かける漁港としては、北から三国〜越前〜敦賀〜小浜。この4ヶ所で水揚げされた雄のズワイガニに、黄色いタグが付けられます。

次にカニの生息場所。雄のズワイガニは水深250〜400m付近、15回前後の脱皮を繰り返すことで大きくなります。一方、セイコガニは水深250m付近で、脱皮は10回程度です。

では、なぜ「越前がに」が他地域より美味しいのか? それは越前海岸沿岸に秘密があります。

越前海岸沿岸は急深で、漁場はすぐそこ。さらに漁場の地形は100m〜150m〜200m〜と段々畑のようになっていて、カニや魚にとってすみやすい場所となっているのです。すみやすいということは快適に過ごせるということ、快適さこそが美味しさにもつながっているのです。

秘密はそれだけではありません。冬の寒さ、海水の冷たさもカニにとって最高の要因と言われています。つまり越前海岸沿岸の地形と冬の海水温度が、美味しいカニを育てているのです。

ズワイガニ「越前がに」は、漁獲されるとすぐに海水の入った水槽に入れられ、生きたまま帰港します。このスタイルは全国でも珍しく、新鮮な美味しさを堪能できるという意味でも、他地域よりも優れているのです。

ちなみに解禁日があるということは、漁の日程があるということ。カニの乱獲防止と環境保全のため、それぞれに漁の期間が決められています。ズワイガニは11月6日〜翌年3月20日まで、セイコガニは同じく11月6日〜翌年1月10日まで、地元でズボガニと呼ばれている水ガニは12月21日〜翌年3月20日までです(水ガニについては後述)。


ズワイガニ、セイコガニ、それぞれの特徴。

雄のズワイガニと雌のセイコガニ。当然、見た目も大きさ、味も異なります。まずは見た目と大きさについて。ズワイガニの幅は40〜50cmと大きく、爪もガッチリ、足部分も太く、ズッシリとした重さを感じます。一方、セイコガニは、大きさ25cm程度とかなり小ぶり。爪も足も細くズワイガニに比べたら華奢な感じで、重さもズワイガニほどではありません。

さらにセイコガニは雌ですから、卵を持っています。お腹に抱えている受精卵は外子(そとこ)、卵巣のことは内子(うちこ)と呼ばれています。セイコガニは2月〜3月に産卵を始めるため、漁獲がこの時期の前まで(約2ヶ月間)と決まっているのです。

次に肝心の味。カニの味を堪能できるのは、やはり茹でガニではないでしょうか。そこで味の前に茹で方を説明しましょう。

水揚げされたズワイガニとセイコガニは、一旦、真水にさらされます(30分〜1時間)。その後、沸騰したお湯に塩を入れて、約15分程度茹でます。そしてズワイガニは冷水をかけて冷まし、セイコガニは冷水をかけずに茹で上がったままムシロの上に並べて、粗熱を取ります。

そして味。ズワイガニの身は一見、淡白な感じに思えますが、一口食べればその予想はいい意味で裏切られるでしょう。というのも、真っ白な身を口に含めば、一瞬にして瑞々しく、適度な甘みと脂が感じられるのです。そして食べるほどにその味が口いっぱいに広がり、美味しさが全身を包んでいくのです。

もちろん甲羅の中のミソも忘れずに。ミソだけを食べるのもいいですが、たっぷり入っているミソに足の身を入れ、混ぜて食べるのも絶品です。

セイコガニの味の特徴は、やはり外子と内子。それぞれの濃厚な味は、一度食べれば忘れられなくなるほど。さらにズワイガニと同様、外子と内子、ミソ、そしてそこに足の身を入れ、混ぜて食べれば、「今までのカニは何だったのだろう?」と思わずにはいられない味に出会えるはずです。


地元の特権、ズボガニの味。

カニが脱皮を繰り返しながら大きく成長していくのは、前述の通り。その脱皮をしてすぐの「越前がに」を「水ガニ」と呼んでいます。いわば、「越前がに」の弟的存在です。水ガニは水分を多く含んでいるため、身の取り外しもスムーズです。それと水ガニの身を殻からはずず時に、「ズボッ」という音がします。その音を生かし、地元では「ズボガニ」と呼ばれるようになったとも。価格も手軽なことから、この味のファンもかなり多いのです。

ちなみにこのズボガニ、県外への販売はほとんどありません。まさに地元の人間だけが楽しめる味なのです。


おいしい食べ方、教えましょう。

「越前がに」とセイコガニ。まずはやはり、茹でたものを食べるのが一番。茹でただけのシンプルなものが美味しいのですから、他にアレンジされた食べ方も美味しいのは言うまでもありません。焼きガニやカニ刺し、カニ鍋、カニしゃぶ、味噌汁などに入れることも。このほかにも味わい方はたくさんあります。

例えばカニ飯。いつも通りに米をとぎ、水をセットした上で、セイコガニをさばき、切れ目を入れた足と外子、内子、醤油と酒を適量入れて炊き上げます。カニの香ばしい匂いと味がしっかりしみこんだご飯は、心身ともに満足できるはず。

「越前がに」の身とミソ、さらにセイコガニの外子と内子を混ぜ合わせ、炊き立てのご飯にのせて丼にするのもいいでしょう。実はこの料理、越前町にある老舗料理旅館のオリジナルであり、食通で知られた作家、開高健氏にちなんだものです。”海の宝石箱”と開高氏が絶賛した料理は、その名の通りキラキラと輝きを放ち、美味しさも抜群です。

そのほか、セイコガニの外子と内子を少し残した中に、日本酒を入れてみるのも美味ですし、カニの身をたっぷり入れたクリームコロッケやグラタン、パスタなど、洋食にも最適です。


参考資料/旬の里ふくい(発行:福井県販売開拓課)